エサシ地名
2005 1/21
大寒の日、某新聞社の夕刊には流氷の到来が空からの写真入で掲載されていた。下記の
ような地形の所であった。
図 １．北海道枝幸郡枝幸町、浜頓別町境の神威岬のカシバード撮影像
オホーツク海に面したこの地は、この図の正面やや手前左の岬が神威岬であり、カムイ
（kamuy:神様）であるが、断崖絶壁の人を寄せ付けないこのような所に「カムイ」地名
はある。この地形は「エサシ」地名でもある。
エサシ e-sa-us-i 頭、山が前/浜についているもの、岬
（江差、江刺、枝幸など）
ご投稿された掲示板に北海道と同じ地名が、「それ以外の所には少ないが、それでもア
イヌ語地名が北海道以外の地名がアイヌ語地名と言えるのか」、と言う基本的な質問があ
り、一度は「同一の祖語である日本語とアイヌ語であるが、地名が証明する。」と言いき
った手前、上記の質問に「一見、アイヌ語と日本語の同一語が少ないのに同じ。」などの
回答ではすまされない。「エサシ」地名で見てみようと思い立った。
上記の神威岬はアイヌ語から見た「エサシ」地名ではあるが、本来の枝幸町は下記のよ
うな地形である。
図 ２．北海道枝幸郡枝幸町の東屋や上空からのカシバード撮影像
左が枝幸港であり、正面が枝幸町であるが、「山が浜についている」とは右手の突き出
している山を言っているものであろうか。かつてのニシン漁港として有名な、江差追分で
も有名な北海道東岸の檜山郡江差町は下記のような地形である。
図 ３．北海道檜山郡江差町の西屋や上空からのカシバード撮影像
ここの江差港はやや左手の島と北海道東岸に囲まれた所である。この場合の "e" は
前に突き出した離れ島のことであろうか。
東北新幹線駅「水沢江刺駅」のある岩手県江刺市もこの「エサシ」であり、ここの地形
は下記のようである。
図 ４．岩手県江刺市の西やや上空から見たカシバード撮影像
この絵の正面、黄色は国道456であり、直角に曲がった区画内に江刺市街地はあり、
中心を流れる北上川支流の人首（ヒトカベ）川である。この川名については
人首川 ヒトカベ sittok-at-pet 肘である、曲がっている川
であろう。川に着き出している出崎を「エサシ」と呼んだ地名であろう。
また、岩手県九戸郡九戸村の江刺家（エサシカ）もあり、カ（ka:上手、岡）であり、
下記のような地形である。
図 ５．岩手県九戸郡九戸村の江刺家の周辺地形図
そこには折爪岳の東の麓である。
折爪岳 オリヅメ ori-tu-moy 岡の峰の入り込んだ所、山
また、石川県小松市には江指町があり、ここの特異な地形も「エサシ」地名に相応しい。
図 6.石川県小松市江指町の周辺拡大地形図
川の合流点に岡の裾が細くなり伸びてきている。
また、秋田県北秋田郡上小阿仁村には餌刺岱があり、上記の地形に類似している。
図 ７．秋田県北秋田郡上小阿仁村には餌刺岱の周辺拡大地形図
「岱（タイ）」は台地を意味する地形用語だそうであるが、（tay:林）と関係あるのかな
いのか気になる。
その他、地形を確認できないが、「餌差（エサシ）」、「餌指（エサシ）」も下記のように
ある。
大阪府大阪市天王寺区餌差町
和歌山県和歌山市餌差町
愛知県豊橋市旭町餌指
大分県中津市餌指町
"e","sa","us-i"のいずれも基本的なアイヌ語地名であり、その他にもいろいろ使われて
いるのではないだろうか。