大山
２００４ ３／１１
鳥取県西部の鳥取県西伯郡大山町にある標高１，７２９ｍのこの山は約１００万年前か
ら噴火を始め、約２万年前位前までの噴火活動をしていたかつての火山だそうである。
島根県境の米子市の方から登山をしたが、こちらからの秀麗な山のイメージも見る方向
によりこれほど変わる山も珍しいかも知れない。
また、この山は別名で剣ヶ峰、弥山、伯耆富士、出雲富士などと呼ばれ、伯耆・出雲の
両国からもシンボル的な山であることが分かる。
図 １．西北西の米子市から見た大山の山容カシバード撮影像
図 ２．北からの大山の山容カシバード撮影像
なお、変わる理由は下記の拡大地形図を見ると分かるのではないだろうか。火口をなす
外輪山の北が陥没し、南の列が東西に直線上に伸び、米子からはその直線の西端を見るこ
とになる。
図 ３．鳥取県西伯郡大山町の大山山頂付近の拡大地形図
なお、米子は火山であったこの山の火山灰の吹きだまりの地だったのではないだろうか。
アイヌ・縄文語の立場からは下記のように読みとれる。
米子市 ヨナゴ yona-ko 火山灰の所
「ダイセン」の山名は漢字の「大山」であることには違いないが、なぜ「ダイセン」と
読むのか疑問は残る。各地に「ダイセン」山名も下記のように分布する。
表 １．各地の「ダイセン」山名の分布
「ダイセン」の山名を考えるきっかけとなったのは、神戸市西区の天台宗の寺であり、
国宝の本堂を持つ大山寺（タイサンジ）を訪れた時、この寺名は地名から出たものであろ
うと感じたことからである。
図 ４．神戸市西区の大山寺のある地形カシバード撮影像
図中央の窪地の山懐に大山寺はあり、谷間を伊川（イガワ）が流れ、この奧で道路脇
に身近にきれいな滝を見ることが出来る。大山寺から見る山は間近に木々の山が迫って
おり、下記のような地名であったのではと考えている。
大山寺 タイサン tay-san 林が前に出ている
なお、「ダイセン」山名に関しては下記のようなものではないだろうか。
大山 ダイセン tay-sem(pir) 林の日陰
北側からのいつも日陰の山をこのように呼んだのではないだろうか。
なお、図３．における関連山名・地名に対して下記のように考える。
弥山 ミセン muy-sem(pir) （入り込んだ）山の日陰
剣ヶ峰 ケンガ kep-ka 削れた上手
槍ヶ峰 ヤリガ ya-ri-ka 山縁の高台の上手
エボシ岩 e-po-us-i 山に子供が付いているもの、岩山
三鈷峰 サンコホウ san-ko-ho-u 前に出たそこで山裾がくっつき合う
振子山 フリコ hur,i-ko 岡の所
振子さん フリコサン hur,i-ko-san 岡のそこで前に出ている
キリン峠 kir,i-un 太地の足、切り立った尾根がある
駒鳥小屋 コマトリ kom,a-tur-i コブ山が伸びている所
大山は古代より霊山として崇められ、大神山神社や大山寺が中腹、火口が北に崩れて流
れている辺りにある。
図 ５．鳥取県西伯郡大山町の大山山頂付近の地形図
その他の気になる地名・山名は下記のようである。
日野郡 ヒノ pi-nup 石の原場
孝霊山 コウレイ ukaw-rer､i 石の重なり合いの山陰
豊房 トヨフサ toy-o-pu-sa 泥だらけの倉､獲物の多い前に出た所
鈩戸山 タタラド tattar-tu 踊り踊る峰、祭場
流れが踊る、滝川の峰
鈩戸川もある。
鍋山 ナベ nam-pe 冷たい水
nam-pet 冷たい川
麓の赤松池などに因む山名では。
赤松 アカマツ wakka-matu 水辺の入り込んだ入江
鍔抜山 ツバヌキ tu-pa-nu(kar)-ke 峰の山頂の見張る所
tu-pa-nu-ke 峰の山頂の豊猟の所
nu-
は「目」であり、狩猟民の見張り場
に相応しい地形に思える。
香取 カトリ ka-tur-i 上手に伸びている所、尾根の所
桝水高原 マスミズ mak-su-muy-tu奥まった窪地の入り込んだ峰
福鎌 フクカマ pu-ke-kama 倉、獲物の多い所の平岩
吉原 ヨシハラ i-o-si-para 獲物がとても多い広い所
栃原 トチハラ tu-us-para 峰にくっついている広い所
船上山 センジョウ sem(pir)-so 日陰の岩（山）
野田 ノダ nota／nutap 太地の頬／湾曲部
勝田ヶ山 カツタガ ka-tu-ta-ka 上手の峰の切り立った上手、岡
甲ヶ山 カブトガ kap-tu-ka 皮の、禿げた峰の上手、岡
矢筈ヶ山 ヤハズガ ya-pa-tu 山縁の岡の峰
野井倉 ノイクラ no-i-kur,a 尊い神の日陰
小泉 コイズミ ko-etu-muy そこは山崎の入り込んだ所
小泉川がある。
象山 ゾウ so 岩／滝
鳥ヶ山 トリガ tur-i-ka 伸びているもの、尾根の上手
鏡ヶ成 ｶｶﾞﾐｶﾞﾅﾙ kakkum-i-ka-na-ru 水を汲む所の上手の水辺の道
蒜山 ヒルゼン pi-ru-sem(pir) 岩山の道の日陰
この周辺の山は「セン」と読まれているがこれらは北から見ていずれもいつも日陰にな
っていることに対するものではないかと考えるが。