鳥海山
２００３ ２／１３
秋田県と山形県を隔てるこの山は標高２２３６ｍの火山である。霊峰・鳥海山は、古来
より信仰の山として崇められ、地元の人たちは「山そのものがご神体」と形容しているそ
うである。山形県酒田市から見た鳥海山は下記のようである。
図 １．山形県酒田市から見た鳥海山のカシバード撮影像
この山は太古の昔から噴火を繰り返し、西と東にあった２つの火山が一緒になり、現在
見られるような複式コニーデ型（円錐状火山）の山容優美な山となったものである。下図
にある七高山が最高峰であったが１８０１年の噴火で新山に６ｍの差でその座を譲ったの
だそうである。
図 ２．山形県飽海郡遊佐町の鳥海山付近の地形図
この山名は「チョウカイザン」の他、「トリノウミヤマ」、出羽富士、鳥海富士、秋田
富士などの別名もあり、地名の由来も色々言われているが、須藤儀門著『鳥海考』による
と、
・鳥海三郎宗任（むねとう）の一族に由来するとする説
・新山が形成される前の火口湖「鳥ノ海」に由来する
・説鳳凰鳥（想像上の霊鳥）が湖（海）に飛来したことに由来するとする説
・秋田県象潟（きさかた）町小滝の金峰神社に伝わる延年舞楽「チョウクライ
ロ」が「チョウカイ」に転化し、鳥海になったとする説
・アイヌ語の「太陽の山」を意味するチュッカイ、あるいは「われわれの山」
を意味するチ・オカイ説
その他がある。
最初のものは奥州で勢力を誇ったが当時の朝廷派遣軍による、前九年の役の敗軍側の阿
部宗任が、鳥海弥三郎宗任などと称していた、当時この地を所領していた等とするもので
ある。
２番目のものは鳥ノ海湖が麓にあり、ここには鳥ノ海御浜神社もあり、トリノウミを漢
字の音読みにしたものであるという意見である。
最後の説はアイヌ語の解釈がおぼつかない。「太陽の山」、チュツカイは（chup-ka-i
:太陽の上手の所、日の昇る所、東）というような意味であろうか。また、「われわれの山
」、チ・オカイは（chi:われわれ）、（okay:群在する）となると山とは直接結びつかない。
山を（o-ka-i:そこの上手の所）などと言ったのであろうか。
鳥海山 チョウカイ chir-okay 鳥が群在する（山）
ならば２番目の趣旨とも相い、漢字の意味と縄文地名の意味とも合うのであるが。
周辺の地名解釈を試みると下記のようである。
象潟町 キサガタ kisar-ka-ta 耳（の形の海）の上手の所
ここは江戸時代中程までは有数の観光地で松島と並ぶ多島の景勝地、古象潟湖があったが
１８０４年の鳥海山の活動に関わる象潟地震で約１．８ｍの隆起があり消滅してしまったの
だそうである。松尾芭蕉もこの象潟を訪れ、「奥の細道」で「象潟や雨に西施がねぶの花」
と残しているのだそうである。
観音森 カンノンモリ kan-o-moy 上手にある山裾の山
笙ヶ岳 ショウガダケ so-ka-ta-ke 滝の上手の切り立った所、山
「笙」とは子守歌に出てくる「デンデンタイコにショウの笛」のショウであり、楽器の
ショウであろうが、ここの地名では当て字であろう。
稲倉岳 イナクラ inaw-kur 幣場、祭場の日陰（の処）
鳥越川 トリゴエ tur-ko-e 延びているそこの頭、頂上
山頂から渦巻き状に峰が延びている。
月山森 ガッサンモリ kat-san-moy 形良く前に出ている山
鳳来山 ホウライ ho-u-nay 川口がくっついている川
山裾がくっついている所の川
飯ヶ森 イイガモリ i-ika-moy そこを上り越える山
黒森 クロモリ kur-moy 日陰の山
兜山 カブト kap-tu 皮の、はげた峰（の山）
鳥海地名に戻ると、この山の北は秋田県由利郡である。
由利 ユリ i-hur-i 神の岡
と言うことで、昔から畏怖の念で見守られていた山である。
図 ３．稲倉岳から見た鳥海山のカシバード撮影像
鳥海山 チョウカイ tu-o-kay 峰をそこでおんぶしている（山）
右手の山裾、鳥越川を造っている峰が山裾から渦巻き状にくだっているのが山の特徴とし
て気になる。