朝日岳
２００３ ３／１５
標高１８７０ｍの大朝日岳を主峰とする朝日山地は山形県と新潟県の県境にあり、出羽
三山の月山などとも峰を連ねている。連峰は磐梯朝日国立公園の中枢をなしている。冬の
偏西季節風をまともに受けるために全国有数の多雪地帯であり、非火山性の褶曲活動によ
る山であり、峻険を極める渓谷などがあり、高山帯の様相である。
山名の由来について、「麓から見て最初に陽光を受けられる山に対して名付けられる山
」と、漢字のそのままの地名として信じられているが果たしてそうであろうか。この山の
東にある山形県東田川郡朝日町などは朝日の見える方向とは逆の位置にあり、違うように
思える。
またこの山名、「アサヒ」の付く山は各地にあり、次の６８が見つかった。
表 １．「アサヒ」の付く山名
この表からは富士山を始め、２０００ｍ以上の山が１０もあり、大きな山を指している
場合が多い。
「アサヒ」は他の阿蘇山の「アソ」や足尾銅山の「アシ」などと言葉の上で共通してい
るように思える。アイヌ・縄文語の立場からは次のようなものであろう。
朝日岳 アサヒ as-pi 切り立っている岩山
であろう。ちなみに
阿蘇山 アソ as-so(-oro) 切り立っている回り一面（の所）
外輪山の内部の状況で、北海道の足寄（ア
ショロ）と同じ。
足尾 アシオ as-o 切り立っている山裾
なお、日本語の足、や葦などのアシはアイヌ語では別のものであるが （as-i:立っている
もの）から出来た言葉と信ずる。
図 １．山形県と新潟県境の朝日岳周辺地形図朝日岳
大朝日岳や西朝日岳を中心にピラミッド状に三方向に山裾を伸ばしているこの山の周辺
の地名は下記のようにアイヌ・縄文語で感ずる。
化穴山 バケアナ pa-ke-ane 山頂部は細い
以東岳 イトウ ito ＜ etu 太地の鼻、山崎
ナタクラ滝 ナタクラ na-ta-kur 水辺の所の日陰
道陸紳峰 ドロクジン tu-rok-sir 山峰がたくさんある山
三方境 ミカタサカイ （三方に道が延びており、縄文的な解釈は無理）
寒江山 カンコウ kan-ko-o-u 上手の所で山裾がくっつく
相模山 サガミ sa-ka-muy 前に広がった上手の山
竜門山 リュウモン rum-o-un 頭、山頂の裾にある（山）
袖朝日岳 ソデ
（朝日岳の尾根を着物のソデに例えたものか）
桧岩屋山 ヒイワヤ pi-iwa-ya 長く引っ張った岩山の岸辺
巣戸々山 ストド sut-o-tu 山裾の入口の峰
御影森山 ミカゲモリ muy-ka-ke-moy 山の上手の所の山
鳥原山 トリハラ tur-para （尾根が）延びて来て広い所
大江町 オオエ oho-i 山奥深い所
頭殿山 トウドノ tu-to(ko)m 山峰の小山
伏辺山 フスベ pu-suop 倉のような箱形（の山）
古寺 フルデラ hur-ter 岡の滝川
熊鷹山 クマタカ kuma-ta-ka 横山の切り立った上手、岡
中崎山 ナカザキ na-ka-san-key 水辺の上手の山崎
富士山が朝日岳とも言われていたように、切り立った山に相応しい、朝日岳であろう。