研究発表会での拙稿「縄文地名の証明方法と場所特定の地
名用語例」（2003/6/1,奈良中央公民館、永田）
の縄文地名の証明方法の概要を下記に紹介する。
永田 良茂 （縄文地名研究家）
Yoshishige Nagata （JOMON Place Name Reseacher）
神戸市北区泉台 ２－９－９
2-9-9,Izumidai,Kitaku,Kobe-City,Japan
日本語語源研究会､京都地名研究会 所属
Member of Academic Circle of Japanese Etymology and Kyoto Circle for Toponymy
あらまし：我が国では地名学が成り立たない。幾世代も引き継がれてきた貴重な文化財である地名が、昨
今、簡単に消されたり、根拠の名ない語感のみで新しく作られる傾向があり、単なる記号としか扱われて
いない。「縄文語はアイヌ語に引き継がれ、原型を残している」という仮定の下に、各地の縄文地名の意
味を明らかにし、地形と照合出来るものであるという多くの結果を得られれば、縄文語・縄文地名の証明
に繋がるはずである。今年６月、日本語語源研究会で「縄文地名の証明方法と特定の場所を示す地名用語」
と題して発表した。証明方法の概要、古代人の自然に対する考え方やアイヌ語・日本語の関係などの概要
を述べて、アニミズム（人体語）と言われる地名例、特に山地名を中心に具体例を地形で示す。
Summary: In Japan,Topony (study of place-name) is not established. For many generations, place
-names are maintained and are precious cultural assets, but today, they are easily erased and new
place-nanes are groundlessly made with word feeling. It means palce-names are used simply as
Symbols of Places. The hipothesis that "JOMON language are handed over to AINU language and
maintained primitive meanings" will bring forth that JOMON language and JOMON place-names are
certified by the concidence of each geographical features and meanings of place-names by using
of this hipothetical language. I have presented in this july 1st at Academic Circle of Japanese
Etymology that "The Method to certify JOMON Place Names and Some terms of Place-names to
indicate specified the places ". At this Symposiun, I will tell about the outlines of the method of
certify JOMON language and JOMON place-names, and the conception of the JOMON ancients
about the nature, and the relation of AINU and JAPANESE words, then show the samples of
JOMON place names with geographical features so-called Animism, especialy Mountain names and
others.
キーワード：縄文地名、アイヌ語、語源、地形、アニミズム、地名学
Keywords :JOMON place-name, AINU language, Etymology, Geographical feature,
Toponymy
１．はじめに 時の考え方を想定し、その結果が当時の生活条件
「縄文文化はアイヌ文化にひきつがれた。」と や地理条件に合致するものである多くの例を提示
梅原猛は著作などを通して言われている。このこ することで証明出来ると考えている。
とは、アイヌ語の地名用語で地名を読み解き、当 故、知里真志保はアイヌ地名を調べる人のため
- 1 -
に「地名アイヌ語小辞典」を残された。抱合語で １００ｍ低く、日本列島は北は樺太を介して、西
あるアイヌ語の語源分析などを通して、アイヌ語 は朝鮮半島を介して大陸とほとんど繋がっていた
の基本単語としても貴重であり、アイヌ語語源分 が、温暖化が始まり約５千５百年前には温暖化の
析方法が地名を解読する上で重要であり、日本語 ピークを迎え、海面は現在より約１０ｍ高く、日
の語源を探る上でも必要であると考えている。 本列島も細々となっていた。その後、波状的に温
一方、地名に関して日本語語源学の吉田金彦は 暖化、寒冷化を繰り返し、現状にいたる。
「地名学の三大要素は歴史・地理・言語の三科学 厳しい自然環境の中で、太地、山や川などを手
が基本」と述べられ、我が国の地名研究の必要性 に負えない人の力の及ばない、どうしようもでき
を述べられている。 ない生き物として考えたのは当然と思われる。一
今日までの歴史、言語学の誤った方向、または 般的にアニミズムや自然崇拝といわれている。
未熟な結果が地名研究停滞の一因に思える。 そのような中で、山を頭に見立てたり、岬をア
（先生方の敬称は省略させて頂く。） ゴや鼻と見たり、多くの地名でアニミズムの世界
を見ることができる。
２．地名の位置づけ、言葉の位置づけなど
（１）地名の位置づけ （３）縄文文化・言葉の位置づけ
狩猟・採集・漁労生活をしていた古代人にとっ 縄文文化が始まる以前の旧石器時代は、大型の
て、文字のない口こみだけの社会にあって、地名 野獣を追って大陸から人が渡ってきたが、温暖化
がどのように名付けられ、伝えられてきたかを推 と共に南から海を渡ってきた人々の生活と共に縄
定し、現状の地名の位置づけを考えてみよう。 文文化が始まったと考えられる。
表１．縄文地名の発生と推移の推定
1 名付けられた当初の地名（縄文地名） | ||
・ | 当時の言葉で誰もが分かるもの （口承伝承としての地図機能） | |
・ | 生活環境や地形の特徴をよく示し 、ユニークな場所を特定できた。 （行動範囲の場所特定機能） | |
・ | 地名用語としての言葉は広く共通に使われていた。 （共通地名が広く分布している） | |
2 弥生時代以降の地名の扱いは？ | ||
・ ・ ・ | 生活・文化の大きな変化に対してもそのまま 継続して使われたものも多かった。 地名の言葉の元の意味は全く失われてしまった。 （縄文語・縄文文化は急激に失われた。） 漢字地名として宛われた地名は当時の音韻を | |
3 現状の地名研究に対する私見 | ||
・ | 古い文献や伝承をもとに地名を解釈している。 （ヤマト言葉や漢字による解釈で縄文地名 としては間違った解釈） | |
・ | 神名および人の苗字や名前から地名が生ま れたと考えている例が多い。 （通常は地名が先では？） | |
・ | 当てられた漢字をもとに地名語源と考えている 場合も多い。 | |
（２）古代人の自然感、地名の考え方
縄文時代は約１万３前年に始まり、約１万年平
穏に続いたと言われているが、地理的な変化を考
えるときに、とても平穏無事と思われる状況では
なかったであろう。縄文時代を取り巻く地理的歴
史観から特徴的な事柄を取り出すと、約２万年前
まで氷期の最終段階を迎え、海面は現在より約
縄文文化、縄文語を取り巻く歴史経緯は下記の
ようである。
表２．縄文時代を取り巻く文化・言語に関する歴史観
年代 | 事項 | 内容 | 特記事項 | |
旧石器時代 | ||||
１．３万年 | 移動、狩 猟生活 | 石器を用い、大型獣を追い求める 狩猟生活 | マンモスハ ンター達 | |
前まで | 大陸とほとんど接続しており、文化・ | の到来 | ||
縄文時代 | ||||
１．３万年 | 土器出現 | 定住生活の始まりと共に縄文土器 | 縄文土器の | |
前から | 大陸と切り離され、列島化と共に独 | |||
５千年前 | 文化の均 | 温暖化と共に人々の移動で文化・ | 人口の東 | |
２．３百年 | 人々の間では平和な生活が約１万 伝える地名を細かく名付けた。 | 縄文地名 | ||
弥生時代 | ||||
２．３百年 数百年間 | 倭国大乱 | 水田稲作技術と共に軍事・政治ノウ | ||
古墳時代以降 | ||||
弥生語化 | 縄文文化・縄文語は早々に消滅し | |||
進展 | ていって、忘れられた。 | |||
最も古い文献である古事記、日本 | ||||
１．７百年 | 古い文献 | 書紀、各地の風土記の地名説話は とってつけたたわいない説話であ | 縄文地名の 元の意味の | |
味が消滅したことを伝える。 | ||||
地名の文 | 地名の音韻は大事にされ、漢字地 | 縄文地名の | ||
- 2 -
（４）日本語とアイヌ語 ・地名の漢字に惑わされず、音韻を正確に読む。
最近の著書では「日本語とアイヌ語」（1993、 ・語源分析法を有効に使う。（相違点10項の応
すずさわ書店、片山龍峯）において、いくつかの 用）
視点から姉妹語であることを追求されている。 ・濁音は清音に置き換える。（相違点２の応用）
一般的な共通点、相違点は下記のようである。 ・子音終わりの単語の語尾は変化しやすい。
表３．日本語とアイヌ語比較
共通点
Ｎｏ | 項 目 | 備 考 |
1 | 語順が同じ | 単語の置き換えで相互互換可能 |
2 | 単語の母音 ５母音 | 一時期、上代８母音説はあった |
3 | 名詞の複数形がない | |
4 | 多くはないが共通の単 語 | 語根の共通性、動詞の共通性 は多く指摘されている |
相違点（現代日本語に対してアイヌ語の特徴）
Ｎｏ | 項 目 | 備 考 |
1 | 子音終わり（閉音節）の 単語が多い | 方言では閉音節単語は各地に 見られる |
2 | 濁音がない 子音はｋ，ｓ，ｔ，ｎ，ｈ， | 正確には濁音も清音も区別しな |
子音の表し方は異なる方法を | ||
3 | 動詞の活用形がない | 動詞の過去形、未来形などない 片山龍峰は日本語動詞の未然 |
4 | 一部の動詞は複数形が ある | もともと別の動詞と言われてい る |
5 | 名詞の三人称形（強調 音節へ） | 日本語の開音節化と関係ある |
6 | 語頭に ｒ 音が立つも | 日本語古語には語頭の ｒ 音 あった |
7 | 単語に二重母音はない | 語根レベルの単語に対して知 おいては重要） |
8 | 単語に二重子音はない | 語根レベルの単語に対して知 おいては重要） |
9 | 基本的な語彙に多くの 頭に対して ｐａ，ｐａｋｅ， | 日本語でも方言を含めると多い |
10 | 抱合語的特徴 分子の単語に対して、 （etu:鼻）は（e-tu:頭、 顔・峰）から | 北方からの混入と言われる （kotan:村）、（itanki:腕）、（chasi: |
梅原猛は著書「日本の深層」（2000,小学館）
において、日本語古語の動詞の中で約半数がアイ
ヌ語動詞と何らかの関係があると指摘されてい
る。地名への摘要に関して上表との関係に置いて、
次のようなことを留意すると、アイヌ・縄文語へ
の変換を容易に行うことができる。
（相違点１）
＊子音が取れるもの
＊母音が追加される。（相違点5の応用）
・二重母音の単母音への変化（相違点7の応用）
例 so-nai：滝川 → so-ne：ソネ
ar-moy:もう一方の入り込んだ所
→ arima：有馬
・二重子音の単子音への変化（相違点8の応用）
例 atuy-ta:海の所 → atuta：熱田
inaw-pa:幣場、祭場→inaba：稲葉
３．縄文語・縄文地名の証明方法
先述の梅原猛、片山龍峯など「縄文語はアイヌ
語に引き継がれた。」などの言語に関するものであ
る。地名などに関しても著書「日本横断アイヌ語
地名散歩」（1995,三一書房、大友幸男）、「アイ
ヌ語朝鮮語日本の地名散歩（1997,三一書房、大
友幸男）、「縄文語の発掘」（2000,新読書社、鈴
木健）、「岩手の地名ものがたり」（1983,熊谷印
刷出版部、小島俊一）など各地にアイヌ語地名が
多いことを指摘されている。
今年６月の日本語語源研究会第４３ 研究発表
会での拙稿「縄文地名の証明方法と場所特定の地
名用語例」（2003/6/1,奈良中央公民館、永田）
の縄文地名の証明方法の概要を下記に紹介する。
下記のような演繹法的な三段論法である。
・前提１．縄文語はアイヌ語に引き継がれ、原型
を残している。（仮説）
梅原仮説とでも呼べるものであろう。
・前提２．地名は数千年の使用に耐えるものが多
い。
たとえ、文化・言語が変わっても地名はそのま
ま使われる例が多い。北海道のアイヌ地名などす
っかり日本語地名として定着している。
・結論：前提１．および２．の結果、多くの地名
がアイヌ語地名用語で読み解け、かつそれらが
歴史的地理条件または歴史的文化条件に合えば
前提１．および２．は認めることができる。
歴史的地理条件とは縄文時代の地形や地理特徴
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など、現在に残され保っていると推定出来ること、 南から見た恵庭岳
また、歴史的文化条件についても、縄文人の生活
や行動様式に照らして当時の状況を推定出来るも
のなどであろう。
アイヌ語で読み解ける例として、先述の大友幸
男、鈴木健や小島俊一の著書例があり、地形など
と照合した例は拙書「古代人の心で地名を読む」
（2001,友月書房、永田）でも多くの例をあげ •恵比須岳 エビスダケ
た。 エビス e-pis-un：頭•浜（尾）•ある
ここでは縄文時代から地形の特徴を残している （頭が尾を向いている）
と思われる山名を中心に、言葉の意味と地形図と 海老の語源と言われ、川の水源も e- で
山容などの目視地形とを照合してみよう。 あり、水源が浜側にある場合にもエビス地
名が多い。エビス信仰の関連地名と言われ
４．地名の具体例、山や岬名を中心に ているが元々は山、川の地形に起因したも
（１）太地の頭としての山の例 のだろう。
古代人は太地を生き物と考え、山をその頭と考 エビス地名としては恵比須、恵比寿、胡、
えていた。アイヌ語で「頭」に 相当する単語は 夷、戎、蛭子、えびすなど、エビ地名とし
e-,pa,pake,sapa,key,rum などあり、これらの ては海老、江尾、蝦、揖斐、えびのなど
言葉を含むと思われる山名例を見てみよう。 岐阜県大野郡丹生川村 乗鞍岳の北の所
なお、各地名•山名などの説明を以下の順で列
記する。
地名•山名など 漢字読み
縄文地名相当 アイヌ語地名用語 日本語訳
場所 住所 標高 m
地形図 20万分の一または４万分の一の縮
小地形図
山容 カシバード撮影像
（地形図から復元した疑似目視図）
地形図、山容図はダン杉本氏の提供されて
いる「カシミール地図」から、フリーソフ
トを活用させて頂いた。 南から見た恵比須岳
１）e- に関する山の例
恵庭岳 エニワダケ
エニワ e-en-iwa:頭•尖っている•岩山
北海道千歳市
表４．エビス山の分布
Ｎｏ | 読み | 漢字地名 | またの名 | 場所 | 標高ｍ |
1 | ｴﾋﾞｽ | 恵比須籠山 | 青森県下北郡佐井村 | 283 | |
2 | 恵比須森 | 岩手県岩手郡松尾村、 二戸郡境 | 1496 | ||
3 | 恵比須峰 | 二ツ峰 | 新潟県新発田市、北蒲 浦郡境 | 1462 | |
4 | エビス大黒の頭 | 群馬県利根郡、新潟県 南魚沼郡境 | 1888 | ||
5 | 恵比須岳 | 岐阜県大野郡丹生川村 | 2831 |
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烏帽子山 エボシヤマ 👉森県👉森市 標高1,584m
エボシ e-po-us-i:頭•子供•つく•もの
（山／山頂にいつも小山がある山）
烏帽子は神主がかぶるもので有るが、帽子
の語源と言われている。アイヌ語の
e-pa-us-i:頭にいつも乗っかっているもの
から出たものと同じであろう。地名の場合
この帽子の語源よりは上記が正しいので
は。
熊本県阿蘇郡白水村、長陽村境
西北の上空2,100mから見た八甲田山
博士山 ハカセヤマ
ハカセ pa-kas:頭•越える
（山頂を越える（道のある山））
阿蘇山内輪山、火口の西南、草千里の東 福島県河沼郡柳津町、大沼郡境
標高1,337m 標高1,482m
烏帽子山の南西約1Kmから見た所
北海道から鹿児島まで、烏帽子山が４３カ所
烏帽子岳が５８カ所確認出来た。
２）pa,pake,sapaに関するもの 西から見た博士山山容
八甲田山 ハッコウダサン
ハッコウダ
pa-ukaw-ta:頭•重なり合い•所
（山／山頂が重なり合っている所）
pa → ha/wa 音韻のゆるみ現象と
言われている。
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羽毛山 ハゲヤマ •鶏頭山 ケイトウザン
ハケ pake:頭、頭の所 ケイトウ key-tu:頭•峰 （山の峰の山）
福島県南会津郡伊南村、檜枝岐村境 岩手県稗貫郡大迫町、下閉伊郡川井村境
標高1,347m 標高1,445m
北から見た羽毛山 西のやや上空から見た鶏頭山
左は毛無森、中央手前から鶏頭山、中岳、
早池峰山、右手は薬師岳
佐和山 サワヤマ ご参考：
サワ sapa:頭、前に出た頭 👉森県むつ市にも鶏頭山321mがある。
滋賀県彦根市 標高 233m 早池峰山 ハヤチネ
石田三成の居城であった、戦略上の要所 pa-ya-chin-ne:頭•縁•崖脚•である
（山縁が崖脚である）
筑波山 ツクバサン
ツクバ tuk-pa:突く•頭
（突き出している山頂）
茨城県つくば市、真壁郡真壁町、新治郡八郷
町境、 877m
北西の琵琶湖湖岸上空から見た和田山
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南から見た筑波山
左山頂が男体山、右が女体山
稲葉山 イナバヤマ
イナバ inaw-pa:幣場•頭
（幣場、祭場の山／岡）
福島県相馬郡飯舘村
ここでは集落の裏山が祭場に使われた。
関連地名：
イナバ地名 稲葉、因幡、稲場、稲庭、
伊奈葉など
イナオ地名 inaw:幣場、祭場
稲尾、稲生など
イナサ地名 inaw-san:幣•棚
稲佐、引佐、伊那佐など
表 ５．イナウ関連山名の分布
読み | 漢字地名 | またの名 | 場所 | 標高ｍ |
ｲﾅｵ | 稲生山 | 長崎県島原市 | 820 | |
ｲﾅｵ | 稲尾岳 | 鹿児島県肝属郡内之浦町、佐多町境 | 930 | |
ｲﾅﾊﾞ | 稲葉山 | 福島県相馬郡飯舘村 | 506 | |
ｲﾅﾊﾞ | 稲葉山 | 富山県小矢部市 | 347 | |
ｲﾅﾊﾞ | 稲葉山 | 鳥取県鳥取市、岩美郡国府町境 | 249 | |
ｲﾅﾊﾞ | 因幡三山 | 面影山 | 鳥取県鳥取市、岩美郡国府町境 | 100 |
ｲﾅﾊﾞ | 因幡三山 | 甑山 | 鳥取県岩美郡国府町 | 100 |
ｲﾅﾊﾞ | 因幡三山 | 今木山 | 鳥取県岩美郡国府町 | 89 |
ｲﾅｻ | 伊那佐山 | 奈良県宇陀郡榛原町 | 637 | |
ｲﾅｻ | 稲佐山 | 長崎県長崎市 | 340 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 青森県北津軽郡小泊村 | 30 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 岩手県盛岡市 | 322 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 岩手県盛岡市 | 233 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷沢山 | 稲荷山 | 秋田県由利郡、雄勝郡羽後町境 | 324 |
ｶｲﾅﾘ | 貝鳴山 | 福島県南会津郡田島町 | 1222 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 栃木県黒磯町 | 298 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 茨城県久慈郡大子町 | 461 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 長野県南佐久郡臼田町 | 750 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 島根県八束郡美保関町 | 254 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 滋賀県高島郡新旭町 | 180 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 静岡県引佐郡引佐町、細江町境 | 75 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 京都府京都市 | 233 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 大阪府泉南郡岬町 | 60 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 和歌山県海草郡野上町 | 319 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 和歌山県東牟婁郡古座川町 | 365 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 岡山県高梁市 | 418 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 岡山県児島郡灘崎町 | 154 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷山 | 香川県高松市 | 166 | |
ｲﾅﾘ | 稲荷姫塚 | 紫雲山 | 香川県高松市 | 170 |
３）rum に関するもの
鶴見岳 ツルミダケ
ツルミ tu-rum-i:２つ•頭 （双頭山）
イナリ地名 inaw-ri:幣場•高台 大分県別府市 1375m
稲荷、稲成、飯生、伊成、
居也など
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南から見た鶴見岳
（２）小山を子供と表現した例
穂高岳 ホダカダケ
ホダカ po-ta-ka:子供•切り立つ•上手
（小山が切り立っている上手）
長野県南安曇郡安曇村、岐阜県吉城郡上宝村
境 3190m 南から見た武尊山 中央が武尊山
日本武尊（ヤマトタケル）の伝承か
ら付けられた漢字地名
面白山 オモシロヤマ
オモシロ o-mo-sir-o:山裾•子供•山•多い
（山裾に小山が群在する）
宮城県仙台市、山形県山形市境 1264m
南から見た穂高岳／奥穂高岳
左側に西穂高岳、右側に明神岳、前穂高岳
中央が穂高岳
武尊山 ホタカヤマ
ホタカ po-ta-ka: 子供•切り立つ•上手 東から見た面白山
（小山が切り立っている上手）
群馬県利根郡水上町、川場村境 2158m
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５．地名分類とそれらの代表例
日本語語源研究会で発表した拙稿から、下記に示す。
表 ６．縄文地名例の分類
Ｎｏ 大分類 地名例 縄文語解釈例 元の意味 備考 分類 | |||||
1 神事に関する地名例 | |||||
稲佐山など | inaw-san | 幣・棚 | 祭場；引佐、稲佐神社など | ||
茶臼山など | ｃｈａｓｉ | 砦、館 | 祭場 | ||
愛宕山など | a-tapkop | 我らが・タンコブ山 | 祭場；愛宕神社など | ||
金毘羅山など | kamuy-pira kom-pira | 神・崖 コブ山・崖 | 祭場；金刀比羅、金毘羅、 金比羅、金比良、琴平神社など | ||
足立山など | a-tat-i＜a-tar-i | 我ら・踊る・所 | 祭場；足立神社、安達神社など | ||
権現山など | kom-ke | コブ山・所 | 祭場；権現神社など | ||
三田など | （kamuy-）mintar | 神の遊び場、庭 | 三田（ミタ）、三原、三春神社など | ||
2 自然地名例 | |||||
-1 山（岡）地名 | |||||
毛無山 | kenasi ＜kene-us-i | 川岸の木原、雑木林 ハンノキ・群生する・所 | 毛無森、怪無山、毛根など | ||
駒ヶ岳など | kom-ka-ta-ke | コブ・上手・切り立った・所 | 駒形、駒頭、駒見、昆布山など | ||
浅間山 | asam ＜a-sam | 奥まった所 我らの・側 | 浅間神社もある。 | ||
宇部 | humpe ＜hur-pe | 鯨（岡） 岡・もの | |||
百合 | i-hur-i | それ（神）・その岡 | |||
-2 岬（山崎）地名 | |||||
江戸地名 | etu | 鼻 | 別表 参照 | ||
ノツ地名 | not not-kew | 顎（アゴ） 顎骨 | 野津、野付、能登、野戸など 野毛、野木、能義など | ||
サバ／サタ地名 | sa-pa sa-ta | 前・頭 前に出る・頭 前・所 | 佐波、鯖江、佐波江など 佐田、佐多、佐太、佐田、佐陀など | ||
エサキなど | e-san-key e-sa-us-i | そこに・前に出る・頭 頭・前・つく・もの | 江崎、恵山 江差、江刺、枝幸など | ||
長崎など | na-ka-san-key | 水・上手・前に出る・頭 | 長崎（山）、中崎、永崎など | ||
-3 海（湖）地名 | |||||
アツミ地名など | atuy-muy | 海／湖・入江 | 渥美、温海、熱海、安住、安曇など | ||
ルリ地名 | rur | 海／湖 | るり沼、瑠璃、瑠璃渓など | ||
セト地名 | sep-to | 広い・海／湖 | 瀬戸、摂津など | ||
静岡 | si-to-o-ka | 大きい・海・そこ・上手 | |||
-4 川関連地名 | |||||
ナカ地名 | na-ka | 水・上手 | 那珂川、中川、那賀川など | ||
ソネ地名 | so-nay | 滝・川 | 曽根、仲宗根、庄内、曽内など | ||
ソベ地名 | so-pet | 滝・川 | 楚辺、曽部など | ||
タタラ地名 | tattar | （水流が）踊り踊りする | 多々良川、竜田川、多田川など 滝名、海岸名との関連 | ||
ワダ地名など | wattar | 水のよどみ、淵 | 和田、渡、亘理、渡利など | ||
服部地名 | hattar | 淵 | 服部 | ||
トネ地名 | to-nay | 海・川 | 利根川、刀根山など | ||
-5 その他の自然地名 | |||||
オタ地名 | ota | 浜、砂浜 | 小田、尾田、織田、太田など | ||
ウラ地名 | ura ＜uta | 浜、砂浜 | 各地の浦地名 | ||
サン（ダ）地名 | san san-ta | （大水が）出る （大水が）出る･所 | 三内（丸山遺跡）、三瓶川 三田（サンダ）など | ||
サカ地名など | sa-ka sa-ka-i/ta | 砂浜・上手 砂浜・上手・所 | 嵯峨、佐賀など 堺、坂井、酒田、境港など | ||
キサ地名 | kisar | 耳 | 伊岐佐、木在（キサラ）、木更津、吉舎など | ||
ツシマ地名 | tu-suma/sima | 二つ・岩山／島 | 対馬、津島など | ||
マツ地名 | matu | 入り込んだ入江 | 長崎、佐賀県の松浦地名など | ||
3 生活・文化地名 | |||||
相生地名 | ay-o-i | イラクサ・群在する・所 | 相生地名は都市には多い。 | ||
イク（タ）地名 | i-ku-ta | それ・呑む・所 | イラクサは古代人の糸、麻布の材料 生田、菊田、菊水など | ||
チクシ地名 | chi-kus-i | 我ら・越す・所 | 筑紫（福岡） 古代の交通の難所、橋のない川 | ||
カスガ（イ）地名 | kas-ka-i | 徒渉する・上手・所 | 春日、春日井など 古代の交通の難所、橋のない川 | ||
アビコ地名など | ａｐｉｒ-ko | 獣道・所 | 阿毘縁（アビレ）、我孫子、安孫子など 狩猟場 | ||
結城地名など | i-uk-i | それ（獲物）・取る・所 | 由岐、結城神社など | ||
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上記表の中で岬、山崎地名の地名である、エド ６．おわりに
地名は特筆すべきものがあり紹介する。なお、地 多くの地名が縄文語•縄文文化の反映として見
形としては現在の皇居、江戸城の辺りのエド、か ることができるという立場から、いくつかの例を
つては古河内湖／海と呼ばれ、大阪城の辺りに突 見てきた。多くの地名語の語源分析とその意味に
き出した岬であったイズミ地名など地形として失 おける地形との照合が、梅原仮説の正しさを証明
われているものもある。 する方法であると確信出来る。
このような地名のデータベース化を進め、多く
表 ７．いろいろな「エツ」地名例
e-tu：頭、顔の山峰・・・・・地名としては岬、山崎の代表
エツの変化 ｅ→エ、イ ｔｕ→ツ、ヅ、ト、ド、トウ、ズ など
読み | 地名語源 | 意味 | 地名例 |
エツ／エヅ | etu | 鼻、出崎 | 金江津、直江津、江津など 江月、江辻、越地、餌釣、道悦、恵 |
エト／エド | etu | 鼻、出崎 | 江戸（＿／井／塚／崎／川／岡な ど）など 江渡、恵土、丙（エド）、井戸（石／井 ／沢）、声問（コエトイ）、越渡、越戸 |
etu | 鼻、出崎 | 江東、江藤、絵堂、江堂、恵堂など 越道、笛堂など | |
エス／エズ | etu | 鼻、出崎 | 江洲、画図、絵図、江頭（川）など 江住、江須（賀／崎／之川）、江出 （エズル）など |
イツ／イヅ | etu | 鼻、出崎 | 伊津（－／井／部／賀など）、伊豆な ど 焼津、居土、出雲（イツモ）など |
イス／イズ | etu | 鼻、出崎 | 伊豆（＿／野／穂／島／木／林／ 泉井、出井、井随、出（羽／目／流 ／渕／後／間／角／灰など） |
イスミ／ イズミ | ｅｔｕ－ ｍｕｙ | 出崎･入 江 | 泉、和泉、伊豆見、伊豆美、出水、泉 夷隅（郡、町、川）、伊住、居住など 泉（谷／野／名／平／田／岡／原 ／山／寺／宮／池／川／郷／窪／ （大／藤／有／湊／本／小／今／ ／島／福／中／増／祖など）泉など |
イズモ | ｅｔｕ－ｍoｙ | 出崎･入 江 | 出雲（－／崎／壇／井／乢など）、 |
イズシ | etu-si | 出崎・大きい | 出石、井図子など （逗子、厨子、図師、都志（つし）など |
イト／イ | etu | 鼻、出崎 | 伊都、井登、伊戸、糸（＿／井／魚 ／田／島／永／下／我／岐／谷／ ／内など）、飯土井など |
イトウ／ イドウ | etu | 鼻、出崎 | 伊東、伊藤、位登、板生、糸生など 伊藤田など |
の人に理解して頂き、広めることが急務であると
考えている。このことが歴史認識、日本語語源な
どの研究にも役立つだろうと確信している。
最後に本発表に際し、ご紹介頂いた大阪通信大
学小沢先生を始め、機会を与えて頂いた協議会の
皆様に深く感謝いたします。
７．参考文献
日本語語源研究会発表資料から
梅原猛 アイヌ語と日本語 ４
資料 1983/9
アイヌ語と日本語１５
資料1989/4
吉田金彦 琵琶湖にはアイヌ人がいた 〃 〃
京都市に残るアイヌ語地名 １７
資料1990/6
永田良茂 縄文地名の証明方法と場所特定の地名
用語例 ４３ 
資料 2003/6
アイヌ語関連
知里真志保 地名アイヌ語小辞典 北海道出版企画
アイヌ語入門 北海道出版企画
片山龍峯 日本語とアイヌ語 すずさわ書店
梅原 猛、藤村久和 アイヌ学の夜明け 小学館
萱野 茂 萱野茂のアイヌ語辞典 三省堂発行
鈴木 健 縄文語の発掘 新読書社
田村すず子 アイヌ語沙流方言辞典 草風館
民族•文化関連
梅原 猛 日本の深層 梅原猛著作集 小学館
梅原、埴原 アイヌは現日本人か 小学館
知里真志保 和人は舟を食う 北海道出版企画
地名関連
本多 貢 北海道地名分類字典 北海道新聞社
山田秀三 北海道の地名 草風館
東北•アイヌ語地名の研究 草風館
アイヌ語地名を歩く 北海道新聞社
大友幸男 アイヌ語朝鮮語日本の地名散歩
三一書房
小島俊一 岩手の地名ものがたり 熊谷印刷
永田良茂 古代人の心で地名を読む） 友月書房
HP http://homepage2.nifty.com/kodaijin-tamat/
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